日本の住宅が抱える問題点は持ち家、賃貸住宅といった区別なく、いずれも質が劣るということに象徴されています。住宅の寿命が他の先進国に比べてはるかに短いことや欠陥住宅問題については以前から指摘されてきたことですが、こうした住宅に関わる問題の根本は、まず日本の社会システムそのものにあることを指摘しておかなければなりません。
日本の住宅は太平洋戦争を境に大きく変化しました。戦前の日本では、まだ「物を大切にする」という習慣が根付いており、住宅もその時々に修繕を加えながら長く使う、ということが当たり前だったのが、戦後は絶対的な住宅不足への対応と、その後の高度経済成長期に新築住宅の着工件数が急増していく中、質を度外視してでも量を確保しなければならないという状況になり、政府もそれに対応する政策を推し進めてきました。
戦後はこうしたスクラップ・アンド・ビルドが経済の活性化を促すものだと考えられ、低質で短命な住宅を作っては壊す、ということを繰り返してきたため、中古市場は当然発達することなく、築20年も経てば建物の資産価値はゼロになり、土地だけの価値になってしまう、というのが今日に至るまでの日本の住宅市場の現実なのです。すなわち、戦後の住宅供給システムの中には、住宅の品質を保とうとか、質の高い住宅を建てて、それを中古市場で流通させながら長く使って行こう、という発想が当初からなかったわけです。
業者にとっては安い住宅を供給し、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返すことが利益を産み出す近道であるため、ひたすら安い費用で、また粗末な材料を用い分譲住宅を作り続け、一方消費者の側から言えば、土地を持つことが最大の資産形成になるという風潮の中、とりあえず土地付きの住宅を取得することが最優先課題であり、住宅の品質については二の次だったのです。
バブル崩壊によって、土地の価値を基準に動いていたシステムはその改変を余儀なくされましたが、住宅の質が向上したかと言えばそうではありません。欠陥住宅問題はどちらかと言えば、バブルのつけとして、今まさに顕在化してきている問題であり、消費者は一人そのリスクを負わされる結果になっているのです。
こうした事態に対処するため、平成12年に施行された『住宅の品質確保の促進等に関する法律』(以下、品格法という)によって、売り主には10年の瑕疵担保責任が課せられるようになりました。
平成18年6月に施行された『住生活基本法』は住政策の基本方針として、一戸建てやマンションなど、住宅の長寿命化を進めながら中古住宅の流通を活発化させようとするもので、同法に基づいて策定された『住生活基本計画』では、人口減少社会への対応や環境負荷の軽減を図るため、全流通戸数に対する中古住宅の割合を引き上げようとしていますが、その目標は平成15年に13%だったものを、平成27年には23%までもって行こうというものでしかありません。これは、いかに私達の住宅が価値のないものであり、今後もその価値を高めることが難しいものであることを物語っています。
中古市場の大きさは市場にどれだけ良質な住宅があるかということを端的に示しています。何世代にも渡って手を加えながら一つの住宅を住み継いで、歴史的な美しい町並みを維持している西欧諸国の中で、イギリスをその例にとってみても、市場で販売されている住宅の90%が中古住宅であり、新築住宅は残りの10%でしかありません。
資産にならない家づくりは、まさにわが国のビジョンなき住宅政策がもたらしたものであり、またそうしたシステムの中で利益をむさぼり、物づくりの誇りを忘れた供給者によってなされてきたもので、さらに消費者自身が無批判に受け入れてきたことなのです。
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